アクター姿のまま結婚、"４人での代行結婚"を決めた理由

都内に住むマキさん（51）＝仮名とショウゴさん（38）＝仮名、さらに、ミレイさん(27)＝仮名とレイジさん(24)＝仮名の二組が先月17日同時に入籍した。

存在代行サービス「Uber Existence」を通してアクターの姿で知り合ったマキさんとショウゴさんは、お互いの顔を知らないまま、結婚するという選択に至った。マキさんは、アクターであるミレイさんを通して存在代行を行い、ショウゴさんはアクターであるレイジさんを通して存在代行を行っている。つまり、ミレイさんの姿のままのマキさんと、レイジさんの姿のままのショウゴさんが結婚するということだ。このような新しい関係について、マキさんに話を聞いた。

マキさんとショウゴさんは共にトランスジェンダーで、マキさんは性自認は女性だが、戸籍上は男性（MtF）であり、ショウゴさんは性自認は男性だが、戸籍上は女性（FtM）だ。マキさんは現在50代だが、これまでのパートナーとの関係性や日本では戸籍上の同性の結婚が認められていない問題など、長年にわたって様々な悩みを抱えてきたという。

「これまで、私のパートナーとなる人はもちろん男性ですが、どれほど愛し合ったとしても、戸籍上の男性同士では結婚は不可能でした。それだけでなく、私の本質である女性の部分と外面の男性的な部分を全体として愛してくれる方と出会うことが本当に難しいものでした。」

とマキさんは語る。そんな中であったのが、存在代行サービス「Uber Existence」だった。

「存在代行は私の生活を全て変えてしまいました。今まで晒されてきた、様々な偏見や男性の体を持つことの困難から、束の間、解放されたような感覚になりました。今まで躊躇してきた化粧や女性らしい服を女性の体で楽しむことができたのです。その中でも、ミレイさんは私の感覚にとても近い外見で、他のどのアクターさんよりも私の自認する女性像にフィットする方でした。」

ミレイさんと出会い、新しい自分に生まれ変わったマキさん。そして、ネットを通じて知り合ったショウゴさんと出会うことになる。

「彼は、某サイトを通じて知り合いました。事前に、Uber Existenceを通してデートしましょうというコミュニティがそのサイト内にはあって、お互いにそこに所属していたので、本当に最初からUber Existenceのアクターさんの姿でしか会ったことはありません。でも、彼に出会った時、彼のアクターであるレイジさんの渋い仕草や外見と、ショウゴさんの落ち着いた性格や話す内容は本当にぴったりで、とても魅力的な方だと思いました。」

「何度かデートを重ねて、やっとお互いがトランスジェンダーだということが分かったのですが、２人の間では、そのことがなんの障壁にもなっていませんでした。むしろ互いの困難を分かち合い、本当の私の身体よりも本当の私であるこの姿を愛してくれる相手でした。」

マキさんのアクターを数ヶ月間務めるミレイさんにも話を聞いた。

「元々私は口下手で、話すことに苦手意識を持っていました。でも、マキさんがユーザーとして私をコントロールする時、本当にいつもの自分よりも自分らしくいられるような感覚に陥るんです。私がこんなふうに話せたらいいのになと思うような話かたや考え方をしていて、とてもリンクするし尊敬しています。だから、仕草の一つ一つが私が自発的にしているものでも、マキさんに自然と動かされているような感覚を感じるんです。これは本当に素晴らしい感覚でした。」

「そして、そんな自分が、レイジさんの体を持ったショウゴさんと恋に落ちるマキさんと、同じ感覚を持つのはそう難しい話ではありませんでした。マキさんのレイジさん＝ショウゴさんへの気持ちは手に取るように分かったし、私がレイジさんと体を触れ合わせること、愛し合うことに全く抵抗はありませんでした。」と語る。

そうした経緯をへて、マキさん＝ミレイさんと、ショウゴさん＝レイジさんという４人１組のカップルが生まれた。そして、同性婚への対応が遅れている日本の制度にもかかわらず、マキさんとショウゴさん、ミレイさんとレイジさんがそれぞれ結婚することで、この４人の婚姻を成立させることができた。